タイ進出企業サポート事業
当社では、日本における先進的な物流や流通のノウハウをタイへ紹介及び実践しています。
また、当社のグループ会社であり、タイ現地法人であるToyo Business Service Public Company Limited (東洋ビジネスサービス株式会社)が、タイへ進出される日系企業様またはすでに進出されている日系企業様が、タイで円滑に経済活動ができるように、タイにおける法律や商慣習等の障壁でお悩みのお客様を解決に向けてお手伝いすることを使命とし、日本とタイの懸け橋として両国の発展に貢献することを理念に掲げて活動しています。
- 日系企業がタイ市場で、タイ企業が日本市場で円滑に経済活動ができるようにお手伝いをすること
- 日本の商品や消費スタイルをタイに、またタイの商品や消費スタイルを日本に紹介すること
- 在タイ日系企業向けビジネスサービス ※
- 日系企業のタイ進出、またはタイ企業の日本進出に対するコンサルティング業務
- 会計サポート(会計業務、月次決算、会計監査)
- 法務サポート(契約書確認及び作成、労使問題対応、訴訟等)
- 総務サポート(会社設立登記、就労ビザ、各種許可証申請、人材教育等)
会社名 | Toyo Business Service Public Company Limited/東洋ビジネスサービス株式会社 |
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所在地 | 32/23 Sino-Thai Tower 2F, Sukhumvit 21 Rd.(Asoke), Klongtoey Nua, Wattana, Bangkok 10110, Thailand |
電話番号 | +66(0)2-661-6061 |
FAX番号 | +66(0)2-260-0567 |
URL | https://toyo-g.com/ |
資本金 | 30,000,000バーツ |
設立 | 2007年11月 |
文:ルークケーオ 写真:ティティウティ・バーンカーン
タイと日本のSMEをコーディネートするおたがいプロジェクト の協力戦略に基づき、相互利益につなげるために、事業面のネットワークと相互協力を確立する仕事は、タイと日本のSMEに、ひいては両国にプラス影響を与えることができる原理と理念に満ち溢れた美しい協力のビジョンを描くことができる。しかし現に実施してみると、この友好関係の糸をつなぐルートは、決してバラの花が敷き詰められた道ではない。
たとえ 11 以上の県と協力合意の協定が調印されていても、この縁組プロジェクトに基づき、SMEを日本からタイに送り込むルート構築を引き受けるコンサルタント企業である東洋ビジネスサービス株式会社は、依然として棘の道を奮闘しつつ進まなければならない。
東洋ビジネスサービス株式会社の梅木英徹 CEO は、今回のおたがいプロジェクトの成功に向けた ジグソーパズルの組立てに 1 つの役割を果たした 取組みを次のように公表した。
「これまで、この問題は日本が外国における友好関係を必要とし、タイを選んで友好関係を築きたいと考えた。その為、過去から日本はタイに多大な投資を行ってきたが、タイにおける投資をさらに増やす必要があり、日本のSMEが商品の製造拠点をタイに移し、準備態勢が整い潜在力のあるタイの事業者と共同出資する必要が出てきた。すなわち、土地、建物、人材、 know how を持つタイの事業者だ。共同出資も実現できるようになり、協力の最初の波紋は、自動車・電子産業部門で生じた。」
奮闘すべき棘(とげ)の存在
コンサルティングと日本の自治体のタイデスクを兼ね、日本からタイへ進出するSMEに対して詳細に至るアドバイス提供等総合支援をする東洋ビジネスサービス株式会社は、色々な課題に直面し、花の中心に依然として棘(とげ)が潜んでいることに改めて気付かされたのである。
梅木英徹氏は次のように語る。
「私は、この戦略には複数の機関が参画する必要があると思う。特に教育省は人材育成の点で参画が欠かせない。とりわけ職業技能労働者、自動車または電子分野の技能を備えた技術者の養成が必要であり、タイにこの種の技能労働者がまだ不足していることを日本も感じている。日本自身も予備の人材確保計画の検討をしている。これは、経験と技能を有する定年退職者が、現場に復帰して、タイ人に知識基盤を伝授する心構えのある人材を募集するものだ。指導を受けるタイ人は、企業内のスタッフとその指導員の両方が対象になる。ただし、ここで直面せざるを得ない障害がある。それはタイの縦割り型の仕事の方法だ。 80 万バーツの預金がある人の為の長期滞在ビザ (long stay visa) 申請の問題にしても、日本のSME要員として入国する年齢 60 歳以上の人のための労働許可書 (work permit) 申請の問題にしても、その条件を審査する際には関係機関の連携・協力戦略について考慮されていない。日本側にとっては不足している範囲の人材を補充する為の派遣であり、タイ人と仕事を奪う為の労働者派遣ではないにも関わらず。こうした事業者にとって不利になるやり方は、信号の青信号の点灯と赤信号の点灯を同時に行っているのと変わらない。」
Time limited of honeymoon period (ハネムーンのタイミングには限りがある)
今日、日本の様々な県のSMEはタイへの進出・投資に目覚め、それを望んでいる。この流れは日本政府による支援活動または覚書への調印をしたこと から 生じている。それはまるで甘いハネムーン期間に該当するが、全ての物事には時間軸が最も大切である。
この流れが生まれてから、協力関係を築く実績がなかったり、プロジェクトの進展が見られなかったりすれば、真剣に期待していた日本のSMEの期待を裏切ることになり、最終的に他国に目を向けざるを得ないだろう。
例を挙げるなら、埼玉県と山梨県の 2 県が東洋ビジネスサービス内にタイサポートデスクの開設をしたが、タイ進出におけるアドバイスと援助を必要としているSMEが 200 社以上ある。
ところが、行政機関の戦略に対する対応が、入国審査にしろ、労働許可書を審査する労働局やロングステイビザを審査する観光開発局にしろ、許可書発行のための審査を行わず、または協定の調印をサポートする為の道を開こうとしないことに改めて気付かされた。工業省の案件だからという理由で、役割と目標が関係機関がバラバラになっている。
もう1つの課題は、これまでとは異なるニーズを持つSMEの為の工業団地である。
「大規模な工業団地では、今や最低でも 2-4 ライの土地が事業者に割当てられているが、これはSMEにとっては広すぎる。彼らは 1 ライもあれば十分なのである。この点おいても、工業用地をサポートする問題は、まだ改善されておらず、我々としてもこの問題を解決するために工業振興局に支援を要請している。民間部門がこのプロジェクトに参画してくると事態は好転すると考えられる。今後の需要を予測すれば、様々な事態がそれまで以上に迅速に片付くのは間違いないだろう。次の点を考えてみよう。 2 つの県だけで、タイ進出に興味を持つ日本のSMEが 200 社以上あるとするなら、これから続いて協力協定に調印しつつある件も含めた全ての 47 県を合わせたらどうなるだろう。これはタイのSMEにとっても重要な機会となるはずだ。もうすぐ到来する 6 億人以上の市場規模の AEC の発足に対応する為に、製造業で力を合わせることができるからだ。ここでのポイントは時間との勝負である。何故なら時間が経っても何も生み出されなければ日系企業はそれに失望し、タイを待つことはないだろう。全てがキャンセルされ全てが終わってしまう。日本のビザが開放されたのと同じように、タイのシステムが受入れ準備を整えれば、同じような来泰者の急激な流れを呼び込むことが実現することは間違いない。関係機関の対応システムが開放された時、タイと日本のおたがいネットワークの友好関係の下に、互いに AEC における重要な地位を獲得する権利がきっと生まれるはずだ。」
梅木氏はこのように締めくくった。
文:ウィーラポン・ジェートピパッタナポン
タイの経済システムにとって日本はどのような重要度を持つか? 現在、タイは日本からもっとも多くの商品を輸入しており、また日本はタイから見て2番目の輸出相手国である。外国からの投資すなわち FDI(Foreign Direct Investment)を見ても、日本はタイにおける投資で第一位であり、外国からの投資の 40% を占めている。
工業部門では、ここ数十年来、日本の大企業がタイに進出して工場を建て、ついにタイは東南アジア地域の重要な商品生産国の1つとなった。したがって、タイと日本の協力は関係する各組織が重要視する問題である。
政府部門における顕著な例を挙げれば、タイの工業省と日本の経済産業省 ( METI ) の協力において、工業省が工業振興局に委任して 日本デスク を設置したことである。その目的は二国間の政府部門と工業部門の協力を推進し、工業部門の競争力を発展・向上させることにある。
この協力の口火を切って日本貿易振興機構 ( JETRO ) 、及び国際協力機構 ( JICA ) との協議が始まった。そこで、工業振興局日本デスクが中心となり、日本の工業開発に関する機関または組織との協力調整センターの役割を担うことになった。その目的はタイの工業発展のために、日本の中央政府及び地方政府の支援方針を探し求め、確立することである。
協力の初期段階において、日本デスクは委任された任務に基づき、 METI 、 SMRJ(SME Support Japan) 、 NEDO(New Energy and Industrial Technology Development Organization) 、 JICA(Japan International Cooperation Agency) 、 JETRO などの中央政府機関との調整に主眼を置いた後、日本の地方政府との協力を通じて関係の輪を広げた。その端緒となったのが、福岡県との協力である。福岡県は、技術協力・交換・移転、共同出資、 2 国間のSMEの競争力強化を目的として、アジア地域のSMEのための工業事業ネットワークの連携プロジェクトを打ち立てていた。 2011 年の 3 月に、日本で津波災害が発生したが、同年後半には、タイも大洪水に見舞われ、両国の工業部門が損害を被り、さらに国内及び世界の工業サプライチェーンも影響を受けた。このような事情から METI の代表者が工業振興局と継続的に事業を行うコンセプトを提案した。それが Otagai( おたがい ) プロジェクトの由来である。
「お互いとは、相互援助を意味する。プロジェクトの第 1 目的は、製造チェーンにおける Sister Cluster( 姉妹提携企業ネットワーク ) を築き、私が製造できなくて、あなたが製造可能なら、私の代わりに製造してもらうという相互援助・サポート体制を築くことである。例えば、タイが洪水に見舞われたら、日本が代わりに製造し、または日本が問題に直面した場合にタイが代わって製造できる。部品の場合、同じパーツを製造していないといったように、製造工場は同種の商品を製造していないだろう。それでも同じモールド、プレス、成形機を使う種類のものなら、お互いに相手の代わりに部品を製造することが可能だ。」
お互いプロジェクト発足後、一定期間が過ぎた時に、相互援助は危機や自然災害の発生時だけでなく、各レベルにおいて実施可能であることに作業部会が気付いた。そこで、工業部門同士の協力を築くところまでプロジェクトの適用範囲が拡大された。そこで重視されたのは政府部門同士及び民間部門同士の協力の絆であり、両者の強みを活かした協力関係を構築することである。例えば、日本には地方ごとに独自技術、いわゆる Only One Technology を有する産業が存在する。一方、タイには製造拠点及び市場としての潜在力があるので、両国がサポートし合い、お互いの競争力を高めることができる。
パーサコーン氏は次のように続ける。
「当時、日本の政府はSMEの海外進出を促す政策を掲げ、工業省はタイが日本のために製造するか、共同で製造、共同出資 (Joint venture) するという具合に、協力関係の構築に注目していたが、工業省は日本からの 100% 投資に主眼を置かなかった。それは、工業振興局の重要任務の1つが、タイの事業者の技術強化を図ることだったからだ。技術を早く身に付ける為には、その技術を買うか日本と協力し合って、技術を活用することしかない。我々が自分で開発すれば、時間がかかり過ぎて他国に出遅れる可能性がある。」
そのプロジェクトも第 2 フェーズに入った現在、日本の地方政府との覚書の調印は、埼玉県、山梨県、秋田県、鳥取県、島根県、愛知県、神奈川県川崎市、福井県、富山県、千葉県南房総市、そして福岡県の 11 箇所に及んでいる。
両国の政府部門が共同調印した覚書により、仲人のような役割を果たしている工業省が選定役を務めることになった。
相互協力関係を引き出す為に誘致をしている。
工業振興局工業事業センター長が、お互いプロジェクトの第 2 フェーズで生まれた工業部門同士の協力の実例を次のように挙げている。企業同士の協力では、日本の技術を用いたトランスの効率向上により、タイとアセアンに市場を築くことを目的としたタイの QTC と日本の Hitachi Metal の提携が挙げられる。
タイの Sammitr Motors Manufacturing PCL. と川崎市の FOMM Corporation との協力では、省エネタイプの電気自動車「 コンパック EV 」を共同で製造・販売している。
タイの CDIP 、 JSP Pharmaceutical Manufactory の両社と富山県の廣貫堂は、日本で研究開発された薬の調合を元に、タイでの医薬品薬製造販売をする為に協力している。
シーファー・ベーカリーと GOYO は、福岡県のベーカリー製品をタイで販売する為に協力しており、将来は共同で製造する計画も立てている。
工業グループ同士の協力においても、山梨県の公益財団法人やまなし産業支援機構とタイサブコン協会が覚書を交わし、ビジネスマッチング・イベントなどの活動を行っている。
タイの裾野産業グループに属する事業者と鳥取県は、技術交換の実現を支援する為に協力している。
また、石川県観光協会とタイホテル協会が提携し、観光産業分野で協力している事例もある。
「少し強調しておきたいのは、我々が日本のSMEを 100 %タイのSMEのライバルとして誘致せず、相互協力を引き出した。タイの事業者はこの点を心配しているかも知れないが、それは次の事情による。日本は市場が縮小し、製造コストも高い。ただ、彼らには技術がある。現在、日本では厳しい経済状況の為に廃業するSMEが増え始めており、日本政府もSMEに海外進出を促している。タイはといえば、研究開発をそれほど重要視していない。だから、政府部門にできることは、技術革新を支援すること以外、時間がかかりすぎる傾向がある。我々は日本から技術を吸収してそれを利用するよう努めている。実際、このマッチングで最初に狙いを定めるのは技術面の課題であり、まずは技術を導入することだ。タイ政府はこの OEM 生産がうまくいっていることを認めているが、技術がなければ、将来他国に立ち向かうのは困難だ。」
このプロジェクトの次のステップは、今年末のアセアン経済共同体の発足により生じる機会を活用することだ。そこで、タイと日本との協力をアセアン諸国に広げるために、適用範囲を拡大する構想と将来計画が立てられている。そのために、タイで投資し、タイを通商・投資の拠点またはセンターとして利用する日本の事業者を支援する日本の Thailand Plus One 政策が活用され、また今後アセアン諸国に投資を拡大することも計画されている。
国家経済社会開発委員会事務局経済競争力開発事務所のサブ・リージョン・レベルの能力開発面の専門家として参加している日本青年 松島大輔 氏が、おたがいプロジェクトによる協力の拡大を示す情報を提供している。 国家経済社会開発委員会事務局経済競争力開発事務所のサブ・リージョン・レベルの能力開発面の専門家として参加している日本青年 松島大輔 氏が、おたがいプロジェクトによる協力の拡大を示す情報を提供している。
例えば、建設分野では日本から事業者がタイに進出して工場を建設するケースが増えると、日本型の工場建設のニーズも増えて両国のSMEレベルの建設業者が事業運営面で協力できるようになる。その場合、日本の企業がトレーニング、工期を厳守する建設プロジェクトの管理方法、さらには日本の事業者のニーズにマッチする建築設計などの点でサポートすることができる。
さらに視野を広げて見た場合、これは日本政府が様々な国に資金援助する建設プロジェクトだが、一方で日本では 2020 年の東京オリンピックに対処するための大規模建設プロジェクトが進行している。そのため、日本の大手建設会社が国内の仕事に目を向け始めたことから、 5,000 億バーツを超える日本の海外建設プロジェクトで仕事を引き受ける企業が不足している現象が現れている。これは日本と協力関係にあるタイのSMEにとって好機である。
それ以外の他産業でも、タイと日本の事業者同士が協力する機会がある。自動車産業と各種裾野産業に関していえば、タイは既に東南アジア地域の自動車製造センターの地位を確立している。物流産業では日本の事業者が豊富な知識基盤を有し、また金融業では日本の事業者が関心を持っている。日本には数多くの地方銀行があり、中にはタイに進出して支店を開設することに関心を抱いている銀行もあるのだ。その目的は、日本からタイに進出する事業者を資金面でサポートすることである。
松島氏は、続いて次の情報を提供した。事業者は日本からタイに進出する機会を捉えて、新たなビジネス面の友好関係を築くことができる。日本では各地域に存在する事業者は、その地域の大規模メーカーに供給するために製造する傾向がある。例えば、名古屋ではSMEがトヨタに納めるために製造するが、タイに進出して製造すればより多くの企業向けに商品を納めることができる。これこそ、タイにおける新しいタイプの協力の確立であり、新しい事業を生み出し、日本からのSME事業者のタイでの成長に貢献することになるのである。
したがって、おたがいプロジェクトは、タイが日本から様々な知識基盤や資金を獲得しつつ、日本からタイにSMEを誘致するプロジェクトである。その目的は、アセアン市場に進出・投資して、世界人口の約半分( ASEAN ・中国・韓国・日本・インド・オセアニア)を占める人々と友好的な関係を築くことにある。 Thailand Plus One プロジェクトを推進する日本との出会いにより、タイを通じてアセアンに投資される日本の資金が、将来タイにも利益を生み出すことになるだろう。
( パーサコーン ) センター長は、プロジェクトを次のように総括した 。
「双方にメリットが生まれている。協力しなければ、あるいは座して待っていては、他国と競争するのは困難だ。今や日本企業は海外に出尽くしている感がある。彼らを誘致できるだろうか。あるいは彼らの誘致を考えないほうがよいのだろうか。彼らの誘致を考えるべきだというのが、その答えだ。ただし、彼らに 100% 投資させるのではなく、彼らにタイ人と最大限協力してもらうために誘致するのだ。誘致してタイ人と競争するのかどうなのか?彼らにはこう言うだろう。我々は 100% の誘致をするのではなく、タイ企業と協力のために誘致するのだと。自ら進出してくる企業もあるだろうが、私としては前述のようにタイ人と協力してもらうための誘致に努めたい。おたがいプロジェクトは大きな構造を持つので、各種システムの構築に努め、できる限り日本との良い結びつきを実現させたい。」
周知の通り、日本は市場規模が大きく、世界の超大国の一角をなす経済大国である。世界市場の変動の影響を多少は受けるものの、国家経済全体にまでは影響が及ばないことは確かであり、日本国内でのみ事業を展開したとしても生き残ることができる可能性は十分に秘めている。従って、タイが日本からの事業者や投資家を数多く誘致することができれば、当然その分、タイの経済発展に寄与することになる。東洋ビジネスサービス株式会社の若き経営者であり、日本人の父親とタイ人の母親を持つハーフである梅木英徹代表取締役は、タイ進出を計画している日本企業と、既にタイで事業を展開している企業の両方に対して、事業を円滑に進める上でのタイでの法律や事業手続きに関する重要な問題を解決する支援役として、自社の役割を明確に定めている。現在、僅か3年の間に、梅木氏の会社にビジネスコンサルティングを依頼した日本企業は420社を超えている。この成功は、顧客の心を掴むために重要なのは、人材の質であり、各人材が社会貢献をする使命感を抱かせ、自身の職務に責任を全うさせなければならないと確信している同社のリーダーの方針によって得られたものである。
今日、同氏は自身の立場を、タイへの投資に日系企業を積極的に誘致する「タイのセールスマン」と位置付け、タイをASEANの投資の中心に推し進める為に、彼自身が組織を成功へと導いた効率的な人材開発育成方針の導入を紹介している。タイ人には、日本人程の勤勉さは持ち合わせていないという弱点はあるものの、本質的にはタイ人も日本人に劣らない優秀な人材を開発することが可能であり、タイ国民が力を合わせれば国家の経済発展を推進していくことは難しいことではない、と同氏は信じている。
梅木氏は、タイ人は本来、愛国心が強く友愛と助け合いの精神を持っており、現在は、ある一部の人々の限定的な要因によって、タイ人が一時的に分裂しているに過ぎないと考えている。現在の緊張状態が緩和され、タイ人が手を取り合えば、タイがASEAN経済の中心として発展することは確実である。日本の事業者によるタイへの投資の促進を図れば当然、タイの雇用が創出され、労働者が日本の先進的な仕事のやり方を日本人から学ぶことが可能となる。これによって更にタイの人材の質を向上させるための開発が加速することになる。
続いて梅木氏は、タイはAECにおける立場を明確にしなければならないと指摘した。これまでの、スキルを余り必要としない、各種部品やパーツの組み立て作業等を請け負う立場から、日本や台湾の企業の参入が日々増加している自動車産業とエレクトロニクス産業へ供給する部品やパーツ、金型や設備の製造におけるKnow-How Hubの立場となるべく、タイは開発に邁進しなければならないという。この方針は、政府による最低賃金の300バーツ/日への引き上げによる影響を緩和する上でも有効である。というのも、賃金が上昇すれば雇用主は、労働者により高い能力と品質の伴った成果を求めるようになる為、受け取る賃金に見合った、専門的な技能やノウハウを必要とする作業を行うよう、タイ人労働者のレベルが底上げされるきっかけとなるからである。これまでタイが行ってきた部品やパーツの組み立て作業は、ミャンマーやカンボジア、ベトナムへと移行されていくことになる。この現象によって、タイの立場が一層明確化されるだろう。
この他にも梅木氏は、タイは、文化の上でも国民性の上でも、日本人と大きな違いがなく、基本的なインフラも整備されており、アセアン諸国の中で最も投資条件が整っていると見ている。シンガポールと比較した場合でも、タイの法人税が20%であるのに対しシンガポールは17%と低いが、生活費や公共料金が非常に高くつくため、税金の差額分を考慮したとしても、タイに投資して3%多く納税する場合と大きな違いはない。梅木氏が競合相手として恐れる、マレーシアとインドネシアについても、民族と宗教の面で日本と相違があり、これは日本人が投資を決定する際に重視する要因である。いずれにしても、小さな支障を見過ごさずに、タイ政府は日系企業に対してできる限り日本語に翻訳した書面の発行を通じてよりタイの法令等の明確化を図り、各企業では日本人経営者の考えを十分に理解できない通訳の起用で生じるコミュニケーションギャップの削減を図る等、日系企業がタイで円滑に活動できるように投資環境の改善を行うべきである。こうしたことが実現できればタイが日系企業にとって世界で最も魅力的な投資先となることは難しい話ではない。
先進国であっても発展途上国であっても、多くの国が直面している問題が、1946年から1964年の間、つまり第二次世界大戦後に生まれた人々の人口層であるベビーブーマー世代への対応だ。彼らが生まれた時代は、戦後復興による国家再建を急ぐ必要に迫られていた。このため、国を前進させる原動力となる労働者を生み出すために人口を増加させる必要があった。当時の国家統治政策は、国家の基盤を築くために、国民に子供を沢山持つよう推進するものであったが、時は流れて現在、このベビーブーム世代は60歳を超えた。
アジアの先進大国である日本においても、避けて通ることが出来ないのが、このベビーブーマー世代、日本語でいうところのDankai(団塊)の世代への対応である。団塊世代の人々は、国を急速に繁栄させ、日本を復興する上での原動力となった。団塊世代の特徴は、勤勉で、忍耐強く、規律正しく、仕事熱心であることだ。この世代の技術者は自身の職業分野での専門技能を有している。だが、現在、彼らが定年を迎え、次の世代に仕事を引き継がせるために道を譲り、自身が貢献した会社から退かねばならなくなった現状では、団塊世代の多くは新たな仕事を見つけられず、どのように余生を過ごせばよいのか迷っている人は多い。彼らの頭の中には理論上の知識はさることながら実践的な知識も豊富にあり、彼らを必要とする分野においては確実に貢献する準備が出来ているというのに実にもったいないことである。
この問題に着目した東洋ビジネスサービス株式会社代表の梅木英徹(うめきひでとし)氏は、日本の団塊世代の技術者を、タイ人従業員に対する研修や訓練の指導者として受け入れるというアイデアを提案するに至った。彼は、この問題解決方法をタイと日本の双方にとって有益なWin:Winモデルであることを提唱する。
「現在、日本全国で団塊世代の人数は600万人以上となっています。彼らの大部分は60歳で定年を迎えますが、年金が支給されるのは65歳からです。この空白の5年間、彼らの多くが生活費を稼ぐために仕事を探しています。大企業での仕事の経験がある団塊世代は、教育機関での特別教員や中小企業での顧問になる等働き口はありますが、国内での仕事を見つけるために職業斡旋所(ハローワーク)に登録に行かねばならない団塊世代が大勢います。日本では団塊世代の雇用に関心のある企業や組織が少ないことを認めざるを得ません。この背景には、需要と供給の関係もありますが、企業が負わねばならないリスクがあるという点も大きいと思います。この世代の健康状態もさることながら、仕事に対する考え方が現役の世代とは合わなかったりもします。この為、新しい世代を雇用する方が合理的という考え方に繋がってしまうのが実状です。」
日本でこのような状況が生じれば、様々な危機的状況も付随して発生することになる。このうちの一つは、団塊世代のうつ病患者の割合が増加しているということだ。最悪、自殺という深刻な問題へとつながるケースもあるようだ。
東洋ビジネスサービス株式会社代表は、この問題に対し、大きく2つの解決方法があると指摘した。一つ目は、現役世代が年金基金に充当する為の税負担が増えることを覚悟すること。もう一つは、団塊世代の働く場所をつくることで、これは長年に渡りタイにおける日本からの事業投資についてコンサルティングを行ってきた経験から、梅木氏が実現をさせたいと願っていることでもある。同氏は、タイの産業とビジネスの発展を支援する専門家として団塊世代を雇用することの利点と、団塊世代を受け入れる際のポイントについて次のように指摘した。
移転すべき凝集された知識
前述のように、団塊世代、具体な年齢でいえば60~65歳の世代は、健康で十分な体力があり、まだまだ自分が役に立つ自負がある為、その知識や能力を、世の中の人や組織、社会のために役立てたいと考えている。従って、タイの産業とビジネスの発展のためにタイの労働者に技術的な知識を伝達する指導者としてタイで働く選択肢もあることを、彼らが知れば多くの方が興味を持ち、中には二つ返事でタイに来る方もいる、と梅木氏は確信している。
高額でない報酬と自立性
団塊世代に必要な報酬と、40-50歳の働き盛りの現役世代を雇用する場合の報酬とを比較すれば、その差は一目瞭然である。梅木氏はこの点についても、日本の団塊世代の多くは、ある程度の貯蓄がある為、自身と家族を養えるだけの所得でも納得してもらえる層がいることについて触れている。むしろ、労働の対価としての報酬よりも、自身の知識や経験が雇用してくれた会社や社会に貢献できることを求めているからだ。月給の目安は50,000バーツ以上で、これに住宅手当が20,000~30,000バーツ 、さらに医療保険料程度は必要となるだろう。40-50歳の働き盛りの現役世代の専門家を雇えば、月給100,000バーツを下回らないことは確実だ。
Should & Shouldn’t? どの分野の団塊世代を雇用すべきか・すべきでないか
全ての職業分野の団塊世代を専門家として雇用可能だろうか?という疑問に対し、梅木氏が明確に助言してくれた。
タイ人労働者に技能を教える為の専門家とは、タイが必要としている金型の設計をはじめ、金型及び各種部品の生産管理面で知識と経験を有する技術者が望ましい。例として、東京からさほど離れていない埼玉県や山梨県等は、日本の部品製造業が盛んで、これらの県にはこの分野の技能を有する団塊世代が多くいると思われる。一方、雇用すべきでないのは、会計や人事の分野の人材である。日本とタイでは、会計業務や人事労務管理方針が異なっている為、雇用したとしても、タイの実務者をはじめ、会社や組織の仕組みの中では、日本人は活躍できない恐れがある。
また、団塊世代を雇用する場合に必要不可欠なものは、日本語の通訳である。団塊世代の大部分は日本語しか話せないことを念頭に入れ、それを受け入れなければならない。
これらの違いを理解し、自身の受入体制を整えれば、「Dankai」という経験者によって組織を発展させるというチャンスの扉を開くことが出来るのだ。